ネフローゼ症候群は、高度のたんぱく尿と血液中のたんぱく質濃度の低下が起こる糸球体の病気で、原発性の糸球体そのものの病変が原因である「一次性ネフローゼ症候群」と、何か別の病気があって糸球体の病変が引き起こされる続発性の「二次性ネフローゼ症候群」に分けられます。
微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などが一次性ネフローゼ症候群の代表的な原因です。
糖尿病性腎症、全身性エリテマトーデスにともなうループス腎炎などが二次性ネフローゼ症候群の原因になります。子どもでも大人でも一次性ネフローゼ症候群が多く、子どもで90%以上、大人で70~80%といわれています。
ネフローゼ症候群の第一の特徴は、強いむくみで、まぶたのあたりや足のすねなどに出て、手で押すとへこむほどです。ひどくなると体中がむくんでお腹の中や肺のまわりに水がたまってしまいます。
尿の量が少なくなり、食欲不振もみられますが、体重が著しく増加します。ネフローゼ症候群では、間質に血液中の水分が漏れるため、からだ全体の体液量は増えているのに体を循環する血液量は減少します。
その結果、腎臓に流入流出する血液量が減り、腎前性腎不全の状態になることがあります。これは大量の発汗の後、水分の補給が不十分なときに腎不全をおこすのと同じようなことで、糸球体に流れ込む血液が不足して濾過ができなくなる状態です。
このタイプの腎不全は、適切な処置を行えば正常になりますが、なかには尿細管の一部が死んでしまい、腎不全が慢性化することもあります。
●ネフローゼ症候群は、入院による安静、臥床が治療の基本です。安静にするだけでたんぱく尿とむくみが軽くなることもあり、安静にすることにより、腎臓の働きを安定させます。
●食事療法は、塩分の制限が必要になります。むくみがある時は1日3g以下に制限します。また、低脂肪の食事にし、体重1kgあたり35kcalほどの高カロリー食をとるようにします。
以前は高たんぱく食をとるように勧められていましたが、現在は否定的な意見が多く、たんぱく質については、体重1kgあたり0.8~1.0gくらいが一般的です。
●薬物療法
第一に選択されるのが副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)です。症状がよくなるにつれて使用量を減らしていきます。副作用として、消化性潰瘍や顔が赤く丸くなったり、毛深くなったりということがありますが、副作用は人によって様々で、副腎皮質ホルモン剤の投与をやめると回復します。
利尿薬は、むくみに対して使われます。その他、抗凝固薬、抗血小板薬、免疫抑制薬などが用いられます。